ギャンブル等依存症対策基本法について

ギャンブル等依存症対策基本法は、2018(平成30)年10月5日に施行された。

1 目的

この法律の目的は、ギャンブル等依存症が依存症者本人やその家族の日常生活や社会生活に支障を生じさせ、多重債務、貧困、虐待、犯罪等の重大な社会問題を生じさせているため、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進して、国民の健全な生活の確保を図り、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することである(第一条)。

2 ギャンブル等とは

ギャンブル等とは、競馬など法律の定めるところにより行われる公営競技だけでなく、パチンコ屋にかかる遊戯その他の射幸行為も含んでいる(第二条)。

3 他の依存症施策との連携

法律として先行するアルコール健康障害対策基本法(2014(平成26)年施行)や薬物等の依存症に関する施策との有機的な連携が図られるような配慮を必要としている(第四条)。

4 啓発週間

国民の間に広くギャンブル等依存症に関する関心と理解を深めるために、ギャンブル等依存症問題啓発週間を5月14~20日と設定し、国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努める(第十条)。

5 国の対策推進基本計画と都道府県の対策推進計画

政府においては、ギャンブル等依存症等対策推進基本計画の策定を義務づけ、少なくとも3年ごとの見直しを求めている(第十二条)。この基本計画は、2019(平成31)年4月に閣議決定されている。都道府県においては、都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画の策定を努力義務とし、少なくとも3年ごとの見直しを求めている(第十三条)。こちらの推進計画は、2021(令和3)年9月末時点で、策定済み21道府県、令和3年度策定予定10都県、策定時期未定16県となっている。

6 10の基本的施策

基本的施策は次の10項目である。

(1)教育の振興等:

家庭、学校、職場、地域その他の様々な場におけるギャンブル等依存症問題に関する教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じたギャンブル等依存症問題に関する知識の普及を行う(第十四条)。

(2)ギャンブル等依存症の予防に資する事業の実施(第十五条)。

 

(3)医療提供体制の整備:

アルコール・薬物・ギャンブル等依存症の専門医療機関・治療拠点機関を国および都道府県で整備し、依存症に係る研修を修了した医師の配置、関係機関との連携、地域の医療機関への研修や情報発信を行っている(第十六条)。

(4)相談支援等:

国及び地方公共団体は、精神保健福祉センター、保健所、消費生活センターおよび日本司法支援センターにおける相談支援の体制の整備を図る(第十七条)。

(5)社会復帰の支援:

円滑な社会復帰に資するよう、就労の支援その他の支援を推進する(第十八条)。

(6)民間団体の活動に対する支援:

国及び地方公共団体は、ギャンブル等依存症である者等が互いに支え合ってその予防等及び回復を図るための活動その他の民間団体が行うギャンブル等依存症対策に関する自発的な活動を支援する。具体的には、ギャンブル等依存症者やその家族のための自助グループや市民活動、回復支援施設などを支援する(第十九条)。

(7)連携協力体制の整備:

施策の効果的な実施を図るため、第十六条の医療機関その他の医療機関、精神保健福祉センター、保健所、消費生活センター、日本司法支援センターその他の関係機関、民間団体等の間における連携協力体制の整備を図る(第二十条)。具体的には、都道府県主催のギャンブル等依存症に関する連携会議の設置であり、2021(令和3)年9月末現在の設置状況は、35/67団体であり、うち都道府県は28/47団体、うち政令指定都市は7/20団体である。

(8)人材の確保:

医療、保健、福祉、教育、法務、矯正その他のギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者について、ギャンブル等依存症問題に関し十分な知識を有する人材の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずる(第二十一条)。具体的には全国拠点機関である独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターで行われる国の研修があり、各都道府県でも研修が行われている(第二十一条)。

(9)調査研究の推進:

国および地方公共団体は、ギャンブル等依存症の予防等、診断及び治療の方法に関する研究その他のギャンブル等依存症問題に関する調査研究の推進並びにその成果の普及を行う(第二十二条)。

(10)実態調査:

政府は、三年ごとに、ギャンブル等依存症問題の実態を明らかにするため必要な調査を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない(第二十三条)。

7 ギャンブル等依存症対策推進本部

ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、ギャンブル等依存症対策推進本部を置く(第二十四条)。

8 ギャンブル等依存症対策推進関係者会議

ギャンブル等依存症対策推進本部は、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の案を作成しようとするときやその評価について、その結果の取りまとめのために、ギャンブル等依存症である者等及びその家族を代表する者、関係事業者並びにギャンブル等依存症問題に関し専門的知識を有する者を委員二十名以内で組織するギャンブル等依存症対策推進関係者会議を置く(第三十二条、三十三条)。