依存症対策全国センターについて

ごあいさつ

樋口 進プロフィール 依存症対策全国センターホームページにようこそ。

依存は大きな健康・社会問題です。例えば、世界保健機関(WHO)によると、アルコールは200以上もの病気の原因になっているとのことです。アルコール依存症の死亡率は非常に高く、原因として他の依存と同様に自殺も大きな地位を占めています。依存に関係する社会問題は、暴言、暴力、失職、経済的問題、犯罪など枚挙にいとまのないほどです。また、依存は、周囲の者に対する影響が大きく、特に多くの家族はつらい過酷な日々を過ごされています。さらに、依存症はすべての精神疾患の中で最も治療ギャップが大きい、すなわち、治療の必要な人が、最も治療を受けていない疾患としてよく知られています。
依存症は従来、アルコール・薬物等の物質依存症に限られていました。しかし、最近、ギャンブル依存症(ギャンブル障害)が、正式に依存と認められるようになりました。また、国際疾病分類第11版(ICD-11)には、ゲーム障害が収載される見通しとなっています。これらのいわゆる行動嗜癖が依存の仲間に入り、依存の守備範囲が益々拡大しています。
このような状況を踏まえ、厚生労働省は平成29年4月より、過去3年間のモデル事業の実績を基に、依存症対策全国拠点機関設置運営事業および依存症対策総合支援事業の二つの事業を開始しました。前者は、依存症全国拠点事業に関するもの、後者は、各都道府県における地域依存症対策事業です。いずれの事業も、依存症の治療や回復支援に携わる専門家の育成、依存症相談事業の拡充、依存に関する情報発信の向上などを目指しています。
久里浜医療センターは、前者の事業に基づき、依存症全国拠点機関(依存症対策全国センター)に指定されています。ここでいう依存症は、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症です。この中で、当センターはアルコールとギャンブルを担当し、薬物は国立精神・神経医療研究センターに委託しています。
依存症対策全国のセンターの主な役割は、依存に関係する医療機関や民間団体の連携の促進、マンパワーの育成、情報発信、調査研究事業です。このような活動を通じて、依存症の発生予防、早期発見・早期介入、依存症からの回復支援、家族に対する支援などに貢献して参りたいと考えています。そのためには、多くの専門家に研修に協力いただくこと、多くの民間団体や自助グループにご支援、ご助言をいただくこと、依存に関わる様々な情報を提供いただくこと、などが必要です。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

依存症対策全国共同センター長
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長
樋口 進

松本俊彦プロフィール私たち国立精神・神経医療研究センターは、この依存症対策全国センターにおいて薬物依存症を担当しています。
これまでわが国では、薬物依存症はともすれば「犯罪」として見なされ、「病気」としての側面が軽視されてきました。そのせいで、医療関係者の多くが薬物依存症患者を「招かれざる客」として忌避し、行き場を失った薬物依存症の本人や家族は誰にも相談することができないまま、地域のなかで孤立を深めてきたのです。
しかし、薬物依存症は病気、それも回復可能な病気です。そして、薬物依存症から回復するために必要なのは、刑罰ではなく治療や支援なのです。
あるいは、こう言い換えてもよいでしょう。回復のために必要なのは、薬物に手を出したことを「反省すること」ではない、と。必要なのは、薬物の問題について「安心して正直になれること」、すなわち、「クスリをやりたい」「クスリを使ってしまった」「クスリがやめられない」と正直に告白できる場所、そのような告白をしても、誰も不機嫌にならず、誰も悲しげな顔もせず、秘密を守ってくれる安全な場所につながることだ、と。
実は、地域にはすでにそのような場所があります。それは、薬物依存症の専門医療機関や精神保健福祉センターであり、あるいは、同じ問題を抱えながらも回復を目指す仲間がいる場所――すなわち、民間依存症支援団体や自助グループです。
しかし、まだまだその数は少なく、また、そのような場所に関する情報が、問題を抱えている本人や家族の一人ひとりにきちんと届いているとはいえません。
こうした状況のなかで、私たちに課せられたミッションは次の三つであると認識しています。第一に、薬物依存症の本人や家族が「安心して正直になれる場所」を国内の隅々にまで行きわたらせること、第二に、そうした場所における治療や支援の質を高めるとともに、支援にかかわる人たちのネットワークを広げ、回復のための選択肢を増やすこと、そして最後に、これらの回復のための社会資源に関する情報を広く発信するとともに、本人や家族が治療や支援にアクセスしやすくすることです。
私たちは、少しでも多くの薬物依存症の本人や家族を孤立から救い出すべく、本事業に全精力で取り組む所存です。そして、そのような活動を通じて、人々が薬物依存症に対して抱いている偏見や誤解を払拭し、薬物依存症から回復しやすい社会作り、地域作りに貢献したいと考えています。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 薬物依存研究部 部長/薬物依存症治療センター センター長

依存症対策全国センター 共同センター長
松本俊彦

依存症対策全国センター(依存症対策全国拠点機関設置運営事業)について

平成30年3月15日
アルコール健康障害・薬物依存症・ギャンブル等依存症対策全国センター


事業目的
依存症は、適切な治療と支援により回復が十分可能な疾患ですが、患者さんやご家族が病気との認識を持ちにくいことや、依存症治療のできる専門医療機関・専門医の不足等から、必要な支援を受けられていないのが現状です。このため、平成2 9 年6 月1 3 日の厚労省通知(「依存症対策全国拠点機関設置運営事業の実施について」障発0 6 1 3 第1 号)において、「アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症対策 全国センター」として、依存症対策の全国的な拠点機関を指定し、都道府県等での依存症対策を推進する上で必要な人材を養成するための研修等を実施することができる指導者の養成や、依存症に関する情報収集、行政機関、医療機関及び一般国民に対する情報提供、助言・指導等を行うことにより、依存症患者、依存症に関連する問題(健康障害、虐待、DV、借金、生活困窮等)を有する者、依存症が疑われる者、依存症になるリスクを有する者、依存症からの回復を目指す依存症患者等に対する支援体制の全国的な整備を図ることを目的として、「依存症対策全国拠点機関設置運営事業」の要項が定められました。


事業対象
本事業の対象となる依存症等は、アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症の三依存となっています。


事業実施主体
事業実施主体は独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターですが、薬物依存症については国立精神・神経医療研究センターに委託され、同センターが各種事業を担当します。


事業内容

  1. アルコール健康障害・薬物依存症・ギャンブル等依存症の相談・治療等に係る指導者養成事業
    都道府県等における依存症の支援に必要な人材養成を推進することを目的として、都道府県等において指導的な役割を果たす者を養成するため、アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症の当事者、家族等からの相談・治療等に関係する以下の研修を実施しています。
    ① 依存症相談対応指導者養成研修
    都道府県等の精神保健福祉センター等においてアルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症の相談支援に当たる職員を対象とした、依存症患者や家族等からの相談への対応力を強化するための研修です。
    ② 依存症治療指導者養成研修
    都道府県等の依存症専門医療機関等において依存症の治療に当たる医療従事者を対象とした、アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症の専門性を向上させるための研修です。
    ③ 地域生活支援指導者養成研修
    都道府県等・市区町村において依存症患者等の地域における生活の支援を行う者(障害福祉サービス事業者、相談支援事業者等)を対象とした、依存症の特性を踏まえた支援についての研修です。
  2. 依存症回復施設職員研修の実施
    DARC (Drug Addiction Rehabilitation Center)、マック(アルコール依存症リハビリテーション施設)等の依存症回復施設の職員を対象とした、依存症からの回復を目指す者への対応力を向上させるための研修です。
  3. 全国会議の開催
    ① 都道府県等依存症専門医療機関全国会議 都道府県等が選定する依存症専門医療機関の医療従事者を対象に、各地域の依存症患者等の状況や課題などの情報共有を目的とした会議です。
    ② 都道府県等依存症相談員等全国会議 都道府県等が設ける精神保健福祉センター等の相談拠点の依存症相談員等を対象に、各地域のアルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症に関する相談の現状や課題などの情報共有を目的とした会議です。
  4. 依存症に関する情報収集・情報提供等
    依存症対策に資する研究等の情報収集・提供や、依存症対策に関する政策提言を行っていきます。依存症行政の施策や課題に対して貢献できるテーマの研究を平成30年度以降実施していく予定です。
  5. 依存症に関する普及啓発 本ポータルサイトを通して、医療従事者、行政機関職員、一般の方々等に対して依存症の理解と対策必要な情報を提供していきます。