海外で治療を受けるには

現在約135万人の日本人が外国に住んでいます。異文化に身を置くことで視野が広がったり、言語やスキルが上達したり、様々な国の人々と交流できたり、と日本にいたときには想像もしなかったような体験を多くできるでしょう。

 

同時に言語、人種、文化、習慣などが異なる国に長期間住むとなると、様々なストレスも経験します。予想以上にコミュニケーションや文化の違いを経験して落ち込んだり、悔しい思いをすることもあるでしょう。職場からの期待を背負って海外に赴任した人は、日本で行っていた業務と異なる業務で結果を求められたり、現地社員とのかかわり方に苦労することもあるでしょう。また、海外赴任では、同伴家族の異文化適応の問題が赴任者本人のストレスになることもあります

 

現地の食事が口に合わなかったり、日本の物が手に入りにくかったり、安全性や衛生面の心配から外出や買い物が制限されたり、外国人向けの娯楽が少ないため暇を持て余したり、と環境要素も気づかぬうちにストレスとなることがあります。

 

希望に満ちて渡った海外でも、言語、文化、慣習、などに適応しながら勉強や仕事をこなそうとするうちに、ストレスが消化しきれなくなっているかもしれません。そして、そのストレスの解消法としてお酒の力を借りる人も少なくありません。また、仕事やプライベートの付き合いで飲む機会が増え、気づかぬうちに飲酒量が増えてしまう場合もあります。海外ではアクセスしやすい、薬物やギャンブルにはまる場合もあるでしょう。最近の自分または家族の飲み方やクスリの使用、ギャンブルが気になる方は、早めに専門家に相談しましょう。

 

海外に住みながら、日本語での診察やカウンセリングを希望する場合は以下のようなリソースがあります:

  • お住いのエリアの日本大使館又は領事館に問い合わせる。多くの場合、大使館・領事館のウェブサイトに掲載されています。
  • 加入している健康保険会社に問い合わせる。保険会社のウェブサイトから検索可能な場合もあります。
  • 海外赴任中の場合: お勤めの会社の産業医・産業カウンセラーやEAP(Employee Assistance Program)カウンセラーに相談する。契約内容によっては、赴任者の家族も利用可能です。ご確認ください。
  • 大学・大学院に留学又は勤務の場合: 大学学生(及び職員)相談室に日本語が話せるスタッフが所属している場合があります。
  • お住まいの国でセラピストや精神科医師を検索するウェブサイトがあるかもしれません。そのようなサイトで「日本語が話せる」、「アルコール(又は薬物、ギャンブル)問題を専門とする」、という条件などで絞り込むことが可能な場合もあります。

 

【参考文献】

1.外務省領事局政策課 海外在留邦人数調査統計 平成30年要約版
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000368753.pdf

2.Shaffer, M. A., and Harrison, D. A.: Expatriates’ psychological withdrawal from international assignments: Work, nonwork, and family influences. Personnel Psychology, 51(1): 87-118. 1998.