内科・産業医科の先生方へ

現在アルコール依存症にかかっている方は成人男性の100人に1人、女性はその10分の1と推定されています。しかし、肝硬変や生活の破たんなど、重症化して初めて専門治療を受ける方が多く、依存症の方のうち専門治療を受けているのは、10人に1人程度しかいません。専門病院を受診する前の既往歴を調べると、肝障害、膵炎、酔っての外傷や骨折、不眠・抑うつ状態など、かなり以前からアルコール関連疾患で他科を受診していた方が多くみられます。その頃に診療に当たられた医師がアルコール問題を早期に診断していれば、重症化の予防や早期の回復が可能だったかもしれません。

 

アルコール関連問題は全身の諸臓器の疾患や多くの精神・社会的な問題にわたります(表1)。アルコールが関連することを疑ったら、AUDIT(オーデイット)のスコアでアルコール問題のレベルを評価することをお勧めします。AUDITはWHO世界保健機関が作成したAlcohol Use Disorder Identification Test(アルコール使用障害特定テスト)の略称で、本邦の「成人の飲酒実態と関連問題の予防に関する研究」1によると、8点から14点が成人男性の10%に相当し、減酒支援を行うことが推奨される問題飲酒者と判定されました。15点以上は成人男性の5%に相当し、入院治療を受けているアルコール依存症の患者さんのほとんどが15点以上でした。したがって、15点以上がアルコール依存症の疑いとなります(図1)。AUDITは各国の実情に合わせてカットオフ値を設定するように作られたものですが、米国で使われている20点以上をアルコール依存症疑いとすると、図1の多くのアルコール依存症患者さんがもれてしまいます。2013年の全国調査ではWHOの診断基準ICD10を用いて調査し、現在アルコール依存症の方が成人男性の1%、過去にアルコール依存症だった方も含めて2%でした。したがって、成人男性の5%が該当すると予想される15点以上の方には、アルコール依存症ではなく、減量が推奨される深刻な問題飲酒者も多く含まれます。15点以上であれば一度は精神科医による依存症の評価を受けるべきです。もしアルコール依存症と診断された患者さんがいらしたら、きちんと専門医療機関につなげてあげることが肝要です。

 

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引用文献:

1.樋口進. 成人の飲酒実態と問題飲酒の予防に関する研究. 平成16年度総括研究報告書. 厚労省保健科学総合研究事業. p25-60, 2009

2.Osaki Y, Kinjo A, Higuchi S, Matsumoto H, Yuzuriha T, Horie Y, et al. Prevalence and trends in alcohol dependence and alcohol use disorders in Japanese adults; Results from periodical nationwide surveys. Alcohol 2016; 51: 465-73.